「……泣き虫」
「うるさいっ!」
澪の言葉に稚尋はニヤリと微笑む。
稚尋の表情が、澪を縛り付ける。
嫌なはずなのに。
「じゃあ、俺はお前に絶対俺のことを好きだって言わせてやる」
「絶対、言わない!」
稚尋の表情に、本気で抵抗出来なくなる。
私はやはり、おかしくなってしまったかもしれない。
「……あっそ」
抵抗する澪に、稚尋は呆れたようにため息をつく。
次の瞬間、何を思ったのか、稚尋は動けない澪に、無理矢理唇を重ねた。
「んっ…………んんっ!?」
突然の出来事に、澪の体からガクンと力が抜ける。
稚尋によって突如として塞がれた澪の唇。
好きな人とする愛のあるキス。
それが澪の夢であり、憧れだった。
そんな澪の夢を、稚尋は一瞬で意図も簡単に打ち砕いた。
最低だ。
「……っ……ん……」
二度目の噛みつくようなキス。
「……っは」
それほど長い時間ではなかっただろう。
しかし、澪にはその何倍も長い時が感じられた。