「ドンマイ♪」
そう言いながらへらへらと笑う瑛梨奈。
笑ってる場合じゃないよ……。
体育祭は嫌いだ。
「あ、稚尋!」
「は!?」
瑛梨奈が突然、稚尋を呼んだ。
澪は慌てて前髪を直す。
「おー、次借り物?」
澪は変な緊張感にかられながら、視線を外して俯いた。
そんな澪を見て、瑛梨奈は何を思ったか、稚尋を澪に近づけた。
ドキリと胸が高鳴る。
「稚尋、速かったね!澪がカッコイイって言ってたよ!!」
「ちょっ!えりっ!!」
嘘言わないでよ!
澪は自分の耳が赤く染まっていくのがわかった。
そっと、伺うように顔をあげてみる。
するとそこには……。
「マジで?正直になったじゃん、姫」
すごく嬉しそうに、意地悪そうに笑う稚尋の顔があった。
「ち……言ってないよっ!」
「えー、言ってたよー?」
「言ってない!」
稚尋が澪の腕を掴んだ。
その行動に、澪は過敏に反応してしまう。