だって、聞きたかったはずでしょう?
なのに、どうして……?
今も“言って”なんて言ってるけど、その時はもっと後だと思うから。
「嫌い!」
まだ言わない。
“嫌い”
その言葉は素直になれないからなのかもしれない。
それは澪の稚尋へのちょっとした抵抗。
「……素直じゃないねぇ」
稚尋はそう言って、眉を下げて笑った。
……それでも笑うんだ。
ファイト。
ファイト。
校庭からは、体育祭に向けての部活ごとの掛け声が聞こえていた。
本当は、こんな事してる場合じゃない。
「……稚尋、体育祭さ」
澪は気を取り直して、話を変えた。
「ん?」
「私、運動オンチだから……自信なくて」
不安そうな顔の澪を見て、稚尋は言った。
「なら、条件つけてみるか」
その顔は、何やら妖しい笑顔に包まれていた。