「ちょっ……待っ」
「もう無理……」
稚尋は、待ってなんてくれない。
それは今も変わらないけど、優しくなったよね。
すっごく優しいキス。
そのキスだけで、その時だけは素直になれる。
本当、変わっちゃったのはお互い様かな?
「…………稚尋」
「……みお」
稚尋の唇から解放された澪は、ほんの少しだけ寂しい気持ちに襲われる。
長い栗色の髪の毛の間から覗くその吸い込まれるような瞳が、澪を捕らえる。
ミツメラレタラ、モウウゴケナイ。
稚尋の口元が、ニィっと吊り上がった。
「…………そろそろ、言ってくれてもいいよ?」
笑顔で澪を見つめる稚尋。
「え?」
「俺が、好きだって」
そう言いながら、稚尋は澪の手首を掴んだ。
そう言えば、前に稚尋にデートに誘われた日、ついに言おうとしたその言葉。
あの時は、稚尋に止められてしまった言葉。
なぜ、稚尋があんな事をしたのか澪にはよくわからなかった。