「ここで?」
澪が驚きながら稚尋に聞き返すと、稚尋は笑顔で頷いて見せた。
誰に見られているかわからない。
澪の鼓動が一気に加速するのがわかった。
稚尋が優しい……?
澪はまた、初めて稚尋と出会った時のシチュエーションを思い出す。
初めてのキスは、すごく乱暴だった。
澪の気持ちなんて、微塵も考えていない、ただ奪うだけのようなキス。
あの行動に、初めは稚尋を嫌いになった。
あの時は本当に。
“好き”
そんな感情は存在していなかった。
だけど、やっぱり私は馬鹿だから、あなたの優しさに負けちゃったんだよね。
「……いい?」
「だって……ここ、教室……」
稚尋が机に手をついて、グイッと澪に近づいた。