いくら放課後の教室にいるからって……。



駄目だよ……。




瞳を潤ませる澪を見て、稚尋は視線を外した。



澪の鼻に、ツーンとした感覚が走った。


「……駄目」



稚尋の手が、澪の瞳に覆いかぶさった。



視界が真っ暗になる。



「……ち……」



「その瞳はナシ」



稚尋は澪から視線を外しながら、そう言った。



“その瞳はナシ”


そんな事言われたって、無理だよ。


私の涙腺がゆるいのは、初めから知ってたでしょう?


稚尋と初めて会ったあの時も、澪は性懲りもなく泣き続けていた。



稚尋が澪に迫る度、嫌だと拒みながら。



それでも稚尋、あなたは幾度となく私に近づいたよね。


ねぇ、稚尋。