* * *
「失礼しまーす」
稚尋は澪の手を引きながら保健室の扉を開く。
通い慣れた保健室の匂いに少しだけ、心が落ち着く。
保健室に他の人影は見えなかった。
澪がホッと胸を撫で下ろした瞬間、耳元で金属音がした。
カチャリと音のする方に振り向く澪。
……まさか。
「さ、くら……君?」
その、まさかだった。
「鍵閉めたの」
期待を裏切らない音の正体に、案外驚きはしなかった。
「何がしたいのよ?」
澪はため息をつきながらようやく質問することができた。
澪の質問に、稚尋は壁にもたれ掛かりながら答える。
「だーかーらー、言ったじゃん。俺はお前に興味があるんだって」
「興味があるってなによ!?」
澪には、稚尋の言葉の意味がさっぱり分からなかった。
澪が半分叫ぶように質問すると、稚尋はため息をつきながらこちらに歩み寄ってきた。
思わず、体が強張る。