「ごめん……」
その人物は、昨日澪が告白した相手。
小林 大輔だった。
何も返す言葉が見つからず、澪その場で静止してしまう。
動揺が隠せない。
「あのっ……」
「朝宮、あのさ、俺「おい、小林」
え?
何かを澪に伝えようとした小林 大輔の言葉を遮って、稚尋は口を開いた。
それはもう、ありえない言葉を盛大に吐き出しながら。
「そいつ、今日から俺の女だからさ」
稚尋は小林 大輔の前で満面の笑みを浮かべながら言った。
「わかるよな?」
本当に、何を考えているのか全く分からない。
「桜……」
稚尋は笑顔で圧力をかけ、小林 大輔に返事を求める。
「ちょっと待って桜君っ……何も……!?」
稚尋を止めようとした澪だったが、逆に稚尋に口を塞がれてしまう。
ちょっと待って。
私の気持ちは?
澪は突然の出来事に頭が真っ白になる。
周りの生徒たちも、多感な時期の学生たちが一斉にどよめく。
朝っぱらから熱烈なラブシーンを見せつけられたのだから、当然だろう。
軽い女。
澪を知る周りの生徒たちからしてみれば、そうとしか映らないだろう。
澪は、それがどうしても嫌だった。
「あぁ、わかってる」
しかし、小林 大輔は何もなかったかのように軽く頷く。
大した動揺もない、爽やかな顔だった。
この事態に、さすがに澪は困惑した。
何で?コバミ……どうしてそんな目をするの?
私、桜君の彼女なんかじゃないよ。
澪の言葉は彼には届かない。