その日、具合が悪かった瑛梨奈は保健室を訪れた。




『先輩…………』




すると、中から稚尋の声が聞こえた。



不思議に思い、瑛梨奈は稚尋に声をかけようと思った。





しかし、瑛梨奈は浅はかだった。


次の言葉を聞いた瞬間、瑛梨奈は凍り付いた。




『稚尋君……』



女の子の声。



稚尋君…………?



『先輩……可愛い』



稚尋の声。


どう言う事……?


瑛梨奈は考えるより先に、体が動いた。



何も考えられなくなり、瑛梨奈は薄いカーテンを勢いよく開けた。



そこには女の子と親しげにじゃれあう稚尋がいた。



見た目から上級生だろう。


稚尋はため息をつきながら、瑛梨奈に言った。




『……何、えりじゃん』



その瞳は、面倒くさそうに、呆れているようにも見えた。



『何、してんの!?』



瑛梨奈は悔しさで涙が込み上げた。



『何って……見てわかんない?』



わかるよ。


えりに黙って浮気してたんでしょ?


開き直るの?



『彼女はっ!!!えりでしょ!?』




その人は誰?



ねぇ、稚尋。違うって言って。