「ワケわかんない……」



次第にペースを乱されていく。


その事実がなんだか無性に悔しかった。


やめてよ。
そう言いたくて、言えなくなる。


稚尋は澪を見下すように、腕を組んでいた。


物凄い威圧感。


きっと彼にとっては普通の行動なのだろう。


けれど、周りからしてみれば、明らかに機嫌が悪そうだ。



周りの視線に耐えきれなくなった澪は、稚尋に少し怒った口調で言った。



「もうっ!私行くからね!つきまとわないで!」



私のことなんて、何も知らないクセに。


澪は怒りを堪えながら教室に向かうために歩き出す。



突然だった。



「わっ……!?」



「うわ!?」



ドンッと鈍い音がして、澪は誰かとぶつかり、へたりこみながら荷物をばらまいてしまう。


今日はつくづく運のない日だ。


鼻を強打し、涙ぐみながら澪は顔を上げた。



「ご、ごめんなさいっ!大丈夫ですか!?」



「……いや、大丈夫」



知ってる声。


ふと視線を向けた先にいた人物に、澪は凍りついた。