十三歳になり、冬歌がいなくなった後、稚尋は雛子へ気持ちを伝えようとした。
今度は雛子が味方になってくれるのではないか、そう思ったからだ。
だけど。
『雛……俺、お前が好き』
そう言った稚尋に雛子が返した言葉は。
『雛も、ちーが大好きだよ!!』
あの頃と何も変わっていない感情だった。
だから。
『雛、そう言うんじゃなくて……俺』
稚尋は焦ってしまった。
稚尋は笑顔の雛子に、無理矢理キスをした。
ずっと、触れたかった相手に触れたことで、稚尋は我を忘れた。
『!?………んっ』
ドンドンと稚尋の胸板を苦しそうに叩く雛子。
それがまた、稚尋の理性を狂わせた。
辛そうにする雛子の顔を見る余裕すら、なかった。
その時だった。
稚尋は頬に、鈍い痛みを感じた。
それが雛子に殴られた痛みなのだと気づいた時には、涙を流す雛子の姿に稚尋は自分の弱さを呪った。
『ちー……ちーなんて、大嫌い』
稚尋はこの時初めて、雛子の泣き顔を見た。
稚尋は雛子を傷つけてしまったのだ。
それから、雛子は稚尋の家に遊びに来なくなった。
稚尋は完全に雛子にフラれてしまったのだ。