* * *
「昔の約束なのに……ね」
つい、思い出してしまった。
「あーあ……」
そろそろ職員室に戻らなくてはいけない。
保健室の外に、先ほどから人影が見える。
冬歌は首を傾げた。
多分、あれは──……。
冬歌は何の迷いもなく、扉を開けると、その影に視線を落とす。
やっぱり。
人影は、冬歌の思ったとおりの人物だった。
「いつまでそんな所にいる訳?……稚尋」
ちょうど凹みになっていて、保健室の中からでないとわからない場所。
そこに稚尋はいた。
何を隠れてるの?
大口叩いて、未遂だったから?
それとも──………。
『冬、歌……』
何をそんなに弱っているの?
最近の稚尋は稚尋じゃないみたいだ。
あの、大人びていた稚尋はどこにいったのだろうか。
本当に、稚尋は変わった。
「朝宮、えりちゃんに直接聞きにいったよ」
そう言うと、稚尋は「わかってる」と小さく頷いた。
盗み聞きなんて、悪趣味なんだから。
冬歌は小さくため息をつく。
「そう。いいの?このままじゃ、また同じ道を辿るよ?あんた」
また、不幸を呼び寄せてしまう。