『ふーん……誰なの?』




稚尋は、静かに言った。





『朝宮……澪』


稚尋の告白に、冬歌は驚いた。



『朝宮なら、ここの常連だよ?』




『は?まじ?』



『まじ。放課後にいっつもいるよ?泣きながら』



あの子も恋多き女の子だもんね。


澪の泣き顔が頭を過り、冬歌は思わず笑みをこぼす。


今度こそ、彼女が幸せになれるかもしれない。


そう思ったからだ。



『どうしたんだろ……俺……』



稚尋がここまで乱される姿、久しぶりに見た。


あたしの結婚式からだから……雛子以来?




『朝宮が……本命なんじゃないの?』



稚尋を乱す子なんて、そうはいない。



あたしも朝宮のことはよく知ってるし、朝宮なら、稚尋を変えられるかもしれない。



稚尋の、あたしが払えなかった心の闇を……拭い取ってくれるかもしれない。