それからだ。
冬歌は保健医として稚尋の学校に配属されたのだが、それをいいことに、稚尋は毎日のように違う女の子を保健室に連れ込んだ。
最初は雛子にフラれたショック?なんて同情してたけど。
さすがに疲れて、冬歌は稚尋にキレた。
『ここはあんたの性欲処理の場所じゃないのよ?するなら、他にいってよ!!』
と言うか、女の子と関係を持つ度に崩れてゆく弟を、見たくなかっただけかもしれない。
それからしばらくして、稚尋はこの保健室を睡眠のためだけに利用し始めた。
『先生……お話、いいですか?』
そんなある日、保健室に可愛い常連がやってくるようになった。
彼女とはすぐに仲良くなり、冬歌は本当のお姉さんのように相談にのった。
それが澪。
決まって放課後の前に保健室を出る稚尋と、放課後に保健室に来る澪が会うことはなかった。
それからしばらくして、珍しく稚尋が冬歌に相談を持ち掛けた。
稚尋も、十五歳になっていた。
『冬歌……俺、おかしくなったかも知れないんだけど』
そう言う稚尋の額を触って、冬歌は笑った。
『熱は……ないみたいよ?』
『そうじゃねーって!!!ただの手に入れたい女なのに……何も手を出せない』
そう言うと、稚尋は悔しそうに俯いた。
あらあらあら。
こんな稚尋、珍しい。
本気で動揺してるんじゃない?