稚尋は自分を信頼してくれていた。
それだけで、冬歌は泣きそうになった。
四年間の信頼を、稚尋はちゃんと分かっていた。
大丈夫、稚尋を裏切ったりしないから。
あたしの、大切な弟だもんね。
『稚尋……あたしが結婚しても、大丈夫だよ?ずっと……稚尋の味方だから』
冬歌までもが泣いていた。
冬歌が稚尋の涙を見たのは、この時以来、一度もなかった。
二十四歳になった冬歌は、最愛だったはずの人と離婚した。
多分、相性が悪かったんだと思う。
冬歌は久しぶりに家に帰ることが、なによりの楽しみだった。
十三歳になった稚尋。
中学生になった稚尋。
ちゃんと生活しているだろうか。
ちゃんと、心の闇は払われたのだろうか。
そう思いながら、冬歌は扉を開けた。
『ただいまー』
そして、久しぶりに見た稚尋は……依然より、冷たくなっていた。
『お帰り、冬歌』
稚尋は笑っていたけれど、その笑顔には皮肉が込められていた。