「冬ちゃん、教えて……」


約束通り、授業が終わると戻ってきた冬歌に澪は泣き付いた。



そんな澪を見て、冬歌はため息をついた。




「稚尋の、こと?」



「うん……えりのことを聞いても何も話してくれなくて……」



何か事情があるということはわかったが、それが何なのかを澪は知りたかった。


冬歌は澪の言葉を聞き、さらに深いため息をついた。



そして、言った。





「そればっかりは、稚尋本人に聞かなきゃ」





そう言って、冬歌は悲しそうに微笑んでいた。




どうしてなの?


どうして皆、悲しい顔をしているの…………?



「……なんで?」



「……それは、稚尋の傷だから」



冬歌はそう言うと、窓の外をそっと見つめた。



傷…………?



稚尋の過去に、何があったの?



ねぇ、稚尋………………。



「私……どうしたらいいのかな」



涙が溢れそうな瞳を両手で覆い、澪は冬歌に聞いた。


「そんなの……」



冬歌は、澪に笑いかけながら、一言言った。




「直接、えりちゃんに聞いちゃえば?」



「えりに?」


「そう。稚尋が言わないなら、えりちゃんに聞くまででしょ」



そう言って、冬歌は笑っていた。