「なんで?」
好きな人の過去を知るなんて、ドラマとかでも結構ある展開。
だけどだいたい予想がつくから、よけいに辛い。
それでもちゃんと、本当のことが稚尋の口から聞きたかった。
言って欲しかった。
澪は折れそうな心を庇いながらも、必死に言葉を紡いだ。
しかし、返って来た言葉の反動はあまりに大きすぎた。
「それは、言いたくないんだ……たとえ姫でも」
澪にも言えない、稚尋と瑛梨奈の過去。
緊張の糸は、今にも千切れてしまいそうだった。
稚尋がおもむろに立ち上がる。
そんな稚尋を、澪は目で追った。
その瞳に、輝きはなかった。
「俺……どうかしてた……姫の本音なんて、最初っからわかってたのに…………ごめん。ちょっと頭冷やしてくるな?」
そう言って、稚尋は澪に背を向けた。
その瞬間、澪の瞳から堪えていたものが、一気に流れ出した。
「何でよ、なんで……私が好きなんでしょ?私、えりの親友なんだよ……?」
ピタリと一瞬、稚尋の足が止まった。