人は集団になれば必ずカーストが生まれる。そして誰だって自分が底辺の存在などにはなりたくないと当然考える。

 ほとんどの人がカースト上位勢にはへらへらと媚びへつらい、そうではない相手は見下し、自分よりも劣る存在というレッテルを貼りたがるのだ。

 だから”わたしなんか”と言う言葉を使う事で、それを聞いた人たちが勝手に自分の方が優位に立っていると思う人間が多いことも知っている。

 そんな人達に”わたしなんか”と口にすると、彼らは自然とわたしから敵意を反らしてくれる。


——だって人は特別な存在を忌み嫌うものだから。


 第三者によって評価され、自分を出して目立つ位なら、”わたしなんか”と口にしていた方がその他大勢の内の一人になれるから。

 子供心にそう悟るのに、時間はかからなかった様に思う。気付けばそんな楽な逃げ道を自ら望んで選んでいた。

 だから最早、それは十七年という月日の間に染み付いてしまった癖の様なものだった。

 今日初めて話しただけのわたしの為に、真剣な表情でそう説くハル先輩は、おそらくこれまでずっと”カースト上位勢”として生きてきたのだろう。

 ハル先輩ともなれば、周りが勝手に崇め奉り始めるのだろうか。

 こんな時、やはり日陰を好む自分とは住む世界が違う人なのだと思い知らされる。

自分に期待などしていないけど、それは誰かに蔑まれることを望んでいるわけでもない。

 わたしはこれまで、ただ目立たず平穏に過ごしてきただけ。

 いじめられた経験はない。いつだってわたしはスクールカーストで言うところの、中間層だったから。

 一番無難だけど、一番地味で居ても居なくても良い様な存在。