賑やかなスタジオが映し出されたテレビ画面を食い入るように見つめる中、大きな歓声と共に現れたのは今若者の間で絶大な人気を博している四人組のアーティストグループ『season』。
曲はもちろん、メンバーのビジュアルがかなりハイレベルなことでも知られている。
そしてメンバーの名前が四季を含んでいる事から、その名は由来しているらしい。
ボーカル:君原春臣(きみはら はるおみ)
ギター:夏木真澄(なつき ますみ)
ベース:蓮見秋人(はすみ あきと)
ドラム:冬原昴(ふゆはら すばる)
だけど、わたしにとってseasonは単なる好きなアーティストではない。何たってその中には、わたしの親友の姿があるのだから。
半年前はほぼ毎日と言うほど顔を合わせていた顔ぶれが、今や名前を見ない日がないほどの有名アーティストとなり、各メディアの注目度も極めて高い。
それに引き換え、まるで現実味がないその光景をただ茫然と眺めるだけの自分。
ふと頭をよぎるのは、最初で最後の文化祭ステージのこと。
「本当にすごいな。……ハルもアキも」
独り言が思わず口からこぼれ落ちる。
「別に大した事ねーよ」
と、今まさにテレビの液晶に映る人物と同じ顔をしたその人は、呆れた様子でこちらを見つめている。
「俺もハルもあの頃と何一つ変わってない」
「……、」
自分では分かっているつもりだった。
だけど例え二人が変わっていなくても、二人を見る周りの目は変わってしまった。
あの頃は誰よりも近くにいたはずなのに、今は誰よりも遠くに感じてしまう。
いつの間に、こんなにも遠い存在になってしまったのだろう。
楽しかった頃の出来事はつい昨日のことみたいに思い出せるのに。
あの頃みたいにわたしの手の届く距離には、もう彼は居ない。
その事実が何だか今はとても切なかった。
《プロローグfin.》