だけど、わたしは違う。

 そんなことわたしには無理に決まっている。

 だってわたしは、彼らのような特別な人間じゃない。

 いつだって目立たない、いや目立たないように必死になって縮こまっているようなちっぽけな存在だ。

わたしの胸の内など知る由もない二人に申し訳なかった。

 だけど狡いわたしは周りの目を気にしながらも、ハル先輩たちに嫌われる覚悟も、勇気もまた持ち合わせてなどいなかった。

 こんな自分に心底嫌気がさして仕方がない。

 わたしの頭がどうすれば出来るだけ波風を立てずに断れるのかと、適切な言葉を弾きだす前に、ハルの言葉を引き継ぐようにアキ先輩が続けた。

 「元々そのステージにはハルと出るつもりでいたんだが、ドラムをやれる奴が中々見つからなくて困ってたんだ」と、苦笑してみせたアキ先輩。

 「そうそう。そしたらここにめちゃくちゃ探し求めていた子が居た」と、ハルが茶目っ気たっぷりな笑みを浮かべてわたしに笑いかける。

 二人の言葉にわたしは目を見開いた。

 だってこんなこと初めてだったから。

 いつだってわたしは、その他大勢のうちの一人として振る舞ってきたから、当然と言ってしまえばそれまでだけど、わたし“で”いいじゃなくて、わたし“が”いいと言われたことが。

 他の誰でもなく、わたしを必要としてくれることがこれ以上ないほど嬉しかった。

 本当は断るための言葉を口にするはずなのに、気づけばわたしは「やってみたいです」と口にしていた。


「ありがとう。シキならそう言ってくれる気がしてた」

「え?」

「だってシキって、ドラム叩いてる時すげーいい表情してるから」

「っ」


 恥ずかしがることもなく、嬉しい言葉を掛けてくれるハル。

 ハルが笑うと、胸が踊るのはどうしてだろう。