例えいじめがクラスで起きても、我関せずな態度を貫き、自分に飛び火しないようにいつだって必死になる中間層。
だけどそれが、間接的ないじめの加害者である事も自覚している。
ハル先輩と話していると、自分の嫌いな部分が浮き彫りになって行く様な気がした。
唐突に襲ってくるその気まずさから、わたしは思わずハル先輩から視線を外す。
「それにそもそもこんな時間に、女の子の一人帰らせてなんかあったら俺責任感じちゃうんだけど?」
すると何とも絶妙なタイミングでそう優しい声を降らすその人は、もしかしたらわたしの心の中が読めるのかもしれないとありもしない事を考えた。
「……っ、」
生まれてはじめて受ける所謂”女の子扱い”に何だかむず痒さを覚える。
しかもその相手が、あの”ハル先輩”ときた。こんな事、口が裂けても人に言えない。
もしも知られてしまおうものならば、学校中の女子を敵に回す様なものだから。
そんな事にすらここにきてようやく気付いたわたしは、すっかり油断していたのだと思い知らされる。
話が弾んだこともあり、わたしは自らハル先輩との間に存在していた距離を詰めていたらしい。
無意識とは言え、普段ならあり得ない自分のその行動に愕然とする。
そしてその距離をハル先輩がさらに詰めた事で、二人の間には人一人分ほどしか隙間がなくなる。
「俺に責任感じさせたくないなら送らせてよ」
その瞬間、断る口実を失い退路が断たれる。
断ることを諦めて、ここは素直に送られておいた方がいい様な気がした。
「——す……、」
”すみません。お願いします”と、口にしかけてやっぱりやめる。
ハル先輩なら謝罪より感謝を口にした方が何となく喜んでくれる様な気がしたから。
「あ、ありがとうございます。お願いします」
「ん。いい子」
会釈程度に下げた頭に、重力が増す。
「……っ、」