石畳を進んでいくと、なんと庭に川が流れていた。
中を覗き込むと、メダカがふよふよと体を揺らしながら泳いでいた。

(大自然だー……)

人の家の庭でこんなのを見たのは初めてで、少し感動する。
庭を再び見渡すとお花がたくさん植えられたエリアがあって、行ってみようと踏み出した時、不意に何かに躓いた。

「ひゃっ!」

「っ……」

体が傾いて、勢いよく地面に転がったと思いきや、なぜか痛みは無い。
不思議に思いながら体を起こすと、整った顔の男の子が私の下敷きになってしまっていた。

「ご、ごごごめんなさい!」
「ってぇな……」

慌てて飛びのくと、痛そうに腰をさすりながら男の子が体を起こして、ジロリと私を睨み見た。
察するに、私は庭に寝転んでいたらしいこの男の子に躓いたのだろう。
いきなり蹴られた挙句、下敷きにされて怒らないわけがない。

「怪我してないですか? 本当にすみません!」

謝りつつ、目線を合わせるように私も屈む。
ため息をつきながら男の子は髪の毛についた土を払う。
地毛にしては少し明るいような、けれど染めるよりも綺麗な栗色の髪が夕日に弾けるように輝いた。

「綺麗な色……」

自然とこぼれてしまった声に口を覆うけれど、もう遅い。
少し長めの前髪からのぞいた男の子の瞳が、訝しげに細められる。

「なに、お前」

「あっ、えっと、今日から入寮する水瀬一花っていいます!」

「は?」

自己紹介に返ってきたのは、意外にも驚いたような表情だった。