(いったい、どんな子たちがいるんだろう。やっぱりみんな貴族みたいにキラキラしていて、お上品な感じなのかな)
中学までは普通の公立学校だったし、いわゆる『お金持ち』の人たちがどんな風なのか、気になって想像する。
といっても知識は全て学園ドラマなどで見た内容でしかないのだけど。
何より、寮ということは同じ学校の友達と過ごすということだ。
それって毎日がお泊り会みたいなものなのだろうか。
(同室の子とかいるのかな。夜中までおしゃべりして夜更かししちゃったり、朝寝坊しそうになって慌てて準備したり、するのかな)
想像するうちに楽しみで頬が緩む。
ニヤニヤしているのが周りにばれないよう咳払いで誤魔化しながら、私は切符を手に電車へと飛び乗った。
それから1時間――で、着くはずだったのだけれど。
なぜか2時間経っても、私は何もない道をうろうろと彷徨っていた。
(ホームページにはバス停から徒歩10分って書いてあったのに……1時間くらいは歩いてる気がする……)
遊歩道のように爽やかな自然の中に道が整えられてあって、緑の隙間からは木漏れ日が優しく落ちてくる。
最初はすがすがしい気持ちで散歩気分を味わっていたけれど、1時間ともなるともうハイキングだ。
それにさっきからなんだか同じ景色をグルグルと巡っているような気もする。
人に道を尋ねようにも、すれ違うのはピチピチと可愛らしく鳴く小鳥ばかりで、人の姿は見当たらない。
それでも諦めずに地図と睨めっこしながら歩いていると、目の前にガラス張りのおしゃれな家が姿を現した。
「わ、すご……」
テレビで一度見たことのある恋愛観察番組のなんとかハウスのようだ。
自然になじみながらもおしゃれな雰囲気のあるそれに行きつくまでには、広く緑豊かな庭が見えた。
(誰かの別荘かな? 道、聞けるかも!)
現れた救世主に縋りつくような気持ちで門の前まで近付くと、そこの表札には『星並学園寮』と書かれていた。
「え……!? ここが?」
思わず大きな声が出てしまって、慌てて口を覆う。
学園生が住む寮だからもっと大きい普通のマンションを想像していた。
目の前にある家も大きな家ではあるけれど、学園生を全員収容できるとは思えない。
(他にも別の場所に寮があるのかな)
お金持ち学園だし、優雅な土地の使い方をしているのかもしれない。
とにもかくにも、一度中に入って聞いてみよう。
そう決めて、私はついに星並学園寮へと足を踏み入れた。