「あーいなしちゃったんだ。つまんないな」
「渚くん……」
「つまんねーのはどっちだよ。くだらねー」
「騎士気取り? おもしろ。『代替品』のくせに偉そうだね」
「っ」
(代替品?)
どういうことかと疑問に思った瞬間、樹生くんが顔色を変えて渚くんの胸ぐらを掴んだ。
「っ、樹生くん!」
「ははっ、はは……相変わらずちょろいね、樹生」
「ケンカはだめだよ! ほら、先生が来るかもしれないし」
「黙ってろ」
冷え切った眼差しに睨まれて、思わず口を噤む。
相変わらず楽しそうな渚くんが、意地悪くその瞳を細めた。
「出た、今度はお姫様気取り。あのねー、ケンカじゃないの、俺たちのは。殺し合いみたいなもんだから。な? 人殺し」
「っ!」
思い切り振り上げた樹生くんの拳は、あっさりと渚くんに受け止められてしまう。
そして今度は渚くんの拳が、樹生くんのお腹へとのめり込んだ。
「樹生くん!!」
「悪いけど殴られ慣れてんだよね。あと、見えないとこ殴るのも得意。そうされてきたから」
何が楽しいのかニコニコ笑って、渚くんは膝をついた樹生に近付く。
慌てて、樹生くんを庇うように前へ立った。