(うう、仕方ない。ここは素直に正直に……)
「えっとね、渚くんが一緒に登校しようって誘ってくれたの」
「どうせ、星並学園寮の前で待ち伏せでもしてたんでしょう? これだから外部生は……」
「ち、違――」
「まーまー、そんなに苛めないであげてよ」
聞きなれた声に驚いて顔をあげると、信じられないほど意地の悪い瞳と目が合う。
「渚くん、どうして……」
「最後の仕上げをしに♪」
「え?」
渚くんは楽し気に瞳に弧を描くと、私たちの輪に加わる。
そして私以上に驚く女子生徒たちに向かって、口を開く。
「一花ちゃんは、星並学園寮に住む仲間だからね。1日目くらい、一緒に登校してあげたくて」
その瞬間、シンと教室が静まり返る。
そこでようやく『仕上げ』の意味に気付いたけれど、もう遅かった。
「え……寮に、住んでる?」
「誰が、寮に?」
「だから一花ちゃんが」
「じゃあ、星並家の?」
「ううん。一花ちゃんは一般家庭。特例で一緒に住んでるんだよ~」
次々に飛ぶ質問ににこやかに答えて、渚くんが私の頭を撫でる。
一瞬向けられた、渚くんの冷めた微笑みに背筋がゾクリと悪寒が走った。