「ねえ、どういうことか説明して下さる?」

(下さる?)

丁寧な言葉とは裏腹にとげとげしい物言いに、驚いて彼女たちを見つめる。


「えっと、何を説明すれば……」

「言わなくたってわかるでしょう。渚様と登校ってどういうこと? 抜け駆けもいいところだわ」

「な、渚様??」

(私には『さん付け』が不快だって言ってたけど、『様付け』はいいんだ……!)


彼女たちが本人の前でもそう呼んでいるのかはさておき、まずそこに驚いてしまう。
とにかく、入学早々クラスメイトから敵意を向けられているのは事実だ。

(もしかして楓さんが言ってたのって、このこと?)

よく考えたら、星並家の時期後継者候補で、さらにあんな美形。
世の女の子が放っておくはずがない。
そんな男の子と、見ず知らずの女子が一緒に登校して来たら、こうなることは目に見えている。

(だから、渚くんはわざと私と登校したんだ……)

はめられたと気付いて、悔しくなる。


「ちょっと聞いているの?」

「ごめんなさい、悪気はなくて……」

「そんなこと聞いてるんじゃないの。どうしてあなたが渚さんと一緒に登校したか聞いてるのよ」

「それはえっと……」


どう説明するべきか迷っていると、ちょうど教室に入ってきた樹生くんと目が合う。
助けを求めようとするけれど、目はあっさりと逸らされてしまった。