「忠告って? どういう意味?」

「さあ?」

「自分で言ったことのくせに」

「そうだっけ」


とぼける渚くんに唇を尖らせると、『おブス』だと言われてしまった。
渚くんみたいに綺麗な顔に言われると、さすがに言い返しようがない。


「学園の人増えて来たね」

「この近くに一般寮があるからねー」

「なんだか色んな人に見られてる気がするんだけど」

「んー気のせいじゃない?」


そうは言うけれど、視線が私達に集まっているのは確かだ。
熱いものだったり冷めたものだったり、時には囁き声が微かに聞こえてくる。

(なんて言ってるんだろう……)

なんとなく居心地の悪さを感じていると、学園に着く。
試験などで何度か来たけれど、やっぱり学園の大きさと豪華さは見慣れない。


「一花ちゃん、あっちにクラス表張り出されてるって」

「わ、緊張するなぁ」


ドキドキしながらクラス表を見ると、私は樹生くんと同じクラスだった。


「一花ちゃんとバラバラなんて寂しいなー。また会いに行くからね」

「うん、ありがとう」

(今日の渚くんは優しかったな)


もしかしたらこの間は虫の居所が悪かったのかもしれない。
そんな思いは教室に入った途端、勘違いだと気付かされた。