中学生の時はまさか自分が着られるなんて思っていなくて他人事だったけれど、こうして制服に身を包んだ自分を見ると、いよいよ星並学園生になるんだと実感が湧いてくる。


「あっ、もう時間だ!」


鏡に映った時計に、慌ててカバンを掴んで部屋を飛び出す。
急ぎ過ぎて滑るように階段を下りると、指定のローファーを履いて外に出た。

(新しい道は苦手だけど……春休みに道を確認したし、大丈夫だよね! よし!)

門を出て、早速右へ曲がった時。


「うわっ!?」

「どこ行くんだよ、お前」


セーラー服の後ろ襟を引っ張られて、その場につんのめる。
驚いて振り返ると、呆れ顔の樹生くんが私を見下ろしていた。


「さっそくサボりか?」

「ううんっ、学校に行くの!」

「こっちだ」

「え?」

「マップ見ててわかんねーのかよ。いきなり道間違えやがって、ほんとに特待生か?」

「あれ? でもマップは右だって。あれ? 今度は左って言ってる。真っ直ぐ?」


ぐるぐるまわるマップの矢印と共にその場で右往左往していると、盛大なため息が聞こえてくる。


「お前……もうマップ見んな……」


そう言って私に背を向けて歩き出してしまう樹生くんを、慌てて追いかけた。