あっという間に、また1人のリビングに戻ってしまう。
(せっかくのご飯、別々の部屋で食べるの?)
初めての感覚に戸惑いつつ、首を傾げる。
でもやりかけのゲームがあるのなら仕方ないのかな。
手が離せないのかもしれないし。
少しもやもやするけれど、それでもまだ食べてもらえるだけありがたいし、嬉しい。
「よし! この調子で他のみんなも……」
「でっかい独り言〜」
「渚くん!」
いつの間にかリビングにやって来ていた渚くんがテーブルへと視線を向ける。
そして、ハンバーグの盛られたお皿を1つ指差した。
「ねえ、これって俺のー?」
「うん!」
(食べてくれるのかな?)
嬉しくなって見つめていると、渚くんも微笑んでお皿を手に取る。
そしてそのままキッチンへ向かって、なぜかゴミ箱を開けた。
「いただきまーす」
「え?」
ガコンッーー
そんな音とともに、お皿の中身がゴミ箱へと落ちていく。
(今、なに、したの?)
驚いて見つめる私を横目に、渚くんがお皿を流しに置いた。
その音が、いやに耳の奥へ響く。
「ねえ、どうして、今、捨てたの?」
「だって俺のでしょ? どうしようが勝手じゃない?」
「そんなのおかしいよ」
「せっかく私が作ったのに、って? 失礼だって?」
ダン、とテーブルに勢いよく手をついた渚くんが、私に顔を近づける。
綺麗な丸い瞳が、まっすぐとそらすことなく私を見据えた。
「一花ちゃんが勝手に作ったじゃん。俺、頼んでないし。俺が食べなかったらどうせゴミ箱行きだったんじゃない?」
「そんなこと――」
「それとも何? なんでも受け入れてもらえると思ってんの? 頭にウジ虫でも湧いてんじゃない」
言いながら、渚くんがコンコンと私の頭を小突く。
その腕を掴んで、負けないように渚くんを見あげた。
「別に、簡単に受け入れてもらえるなんて思ってない。でも、受け入れて欲しいって思うことは、ダメなことなの?」
「ダメ。死にたくなるほど不快だから、やめて」
にっこり笑みを崩さずに言って、渚くんが私の手を振り払う。
「それじゃ、ごちそうさまでした」
まるで嫌味のような言葉を残して、リビングを去っていく。
1人になった部屋で、脱力したようにその場に座り込んだ。