「一緒に飯? ふざけんな。アイツらとの飯なんか、余計にまずくなる。何考えてるか知らねーけど、ここから出ていけ。俺たちに関わるな」
「い、樹生さん……」
「名前を呼ぶな」
「え……」
「何考えてんだよ、マジで」
視線を落とし、苦しげな声を漏らす樹生さん。
なぜかそれがとても辛そうに思えて、思わず樹生さんの頬へと手を伸ばした。
「どこか、苦しいんですか?」
「触んな」
けれど触れかけた手は、彼に届く前に払い落され、掴んでいた腕も離される。
「干渉するな、俺に」
冷え切った声に、なにも言い返せなくなる。
バタン、と閉められたドアの音が痛いくらいに部屋に響いた。
(びっくりした……)
みんなで食事をすることに、あんなに拒絶を示されるとは思わなかった。
そして何より、思っていた以上に私も拒絶されているらしい。
少し切なくなった気持ちで、赤みを帯びた手首をさする。
(でもなんだか、樹生さんすごく辛そうだった)
広くて綺麗な家。
そこに住む誰もが羨むような大財閥星並家の後継者候補たち。
けれどみんなが集まるはずのリビングに、いまは誰もいない。
7人も住んでいるはずなのに、人の話し声は聞こえなくて、ただ窓から風がカーテンを揺らす音だけが聞こえる。
寂しさを助長させるように部屋に差し込んでいた橙の明かりが、ふっと影を落とした。