(初日だし、うまくいかないのは仕方ないよ。うん)

自分に言い聞かせるように心の中で呟いて頷く。

正直、思い描いていた寮生活とは、全然違っていた。
もっとみんなでわいわい楽しく過ごしたり、友達ができちゃったりするのかなとか期待をしていた。

来てみれば特殊な寮だし、正直あまり好意的に見られていない気がする。

(そんな簡単に、初日から受け入れてもらえるわけないよね。渚くんの言う通り、私は部外者なんだし。まだまだこれからなんだから)

それに、こんなところで挫けていられない。
気合いをいれて立ち上がると、今度は料理の準備に取り掛かる。

スーパーに食材を買いに行こうと思って、さっき凌さんに連絡をしてみたら、なんと定期的に冷蔵庫に補充される仕組みらしい。

(自動で食材が増える冷蔵庫……なんて素敵な)

冷蔵庫を開くと、様々な食材が詰め込まれていた。
色々吟味しながら、メニューを決めていく。

(ハンバーグにしようかな。みんな食べるかわからないけど……作ったら食べてくれるかもしれないし)

みんなで囲む食卓を想像して、自然と頬が緩む。
そう簡単にいくとは思えないけれど、ご飯はみんなも食べるだろうし、作って困ることはないだろう。

期待を込めて食材を取り出すと、調理開始する。

(7人だったらいつもより多めに作ったほうがいいよね)

分量を考えながらハンバーグをこねていると、リビングのドアが開く音がして顔をあげた。

「あ、樹生さん!」

声をかけた私をスルーして、樹生さんは冷蔵庫から水を取り出す。
そして私の手元をちらりと見ると、嘲笑うように頬を緩めた。

「なにこれ。俺らが食べると思うわけ?」

「せっかくならみんなでご飯食べたほうが、美味しいと思って」

「バカじゃねーの」

「え? っあ!」

痛いほどの力で腕を掴まれたかと思うと、そのまま冷蔵庫へと押し付けられた。
背中に小さな衝撃が襲って、思わず顔を歪める。

けれどそんな私以上に、樹生さんは苦しげな表情を浮かべていた。