ゴミ捨て場を何往復かして、ようやく大量のゴミを捨て終える。
さすがに体力が奪われて、ぐったりとしつつリビングに戻ると、渚さんが悠々とした態度で片付いたソファに腰掛けていた。
そしてその周りにはさっき片付けたばかりなのに、もうお菓子のゴミが落ちている。
部屋に置いてあったゴミ箱を手にすると、渚さんの前に屈んで差し出した。
「渚さん、こちらゴミ箱です!」
「ホントに片付けたんだね、ウケる」
「ウケる?」
「媚び売って俺たちに気に入られたいの?」
一瞬どういうことか理解できなくて、言葉が出てこない。
渚さんは楽しそうに目を細めて、チョコレートの銀紙を私の頭上にばらまいた。
はらはらと散るそれが、再び部屋を汚す。
さすがにムッとして渚さんをジトリと見あげた。
「なにするんですか。ゴミはゴミ箱にって習いませんでしたか?」
「もう一回片付けたら? 得意なんでしょ?」
「そんな意地悪言わないでくださいっ」
「そう、俺、意地悪なの。てか敬語辞めてくんない? 同い年でしょ。媚び売ってるみたいでイライラする」
「別に渚さんに媚びを売ってるわけじゃ……」
「さん付けもキモいからやめて? 凌は関係的に仕方ないけど、キミは部外者なんだし」
関係的に、というのは分家だからということだろうか。
「わかった。これからは渚くんって呼ぶ」
「従順だね~奴隷みたい」
「奴隷って……!」
言葉選びに驚く私をよそに、渚くんは立ち上がると残ったチョコを床に放る。
「床でも磨いておきなよ、奴隷ちゃん」
「い、意地悪!」
返事はせず、渚くんはただ楽しそうに口元に笑みを浮かべてリビングから出て行く。
凌さんは『癖のある人たち』だと言っていたけど、癖どころじゃない。
「……食べかけのゴミの正体は渚くんだったか」
片付けの最中にいくつか見かけた『食べかけ』の犯人。
わかったのは嬉しいけど、片付けた傍から床に捨てるなんて信じられない。
仕方なくゴミをかき集めながら、思わずため息がこぼれそうになって慌てて首をふった。