「ホントにやるの? 一花ちゃん」

「うん! こう見えて、掃除は得意なの。あ、ねえ掃除用具はどこ?」

「そこの物置にあるけど……」

「私、手伝わないわよ」

「あーあ、楽しみだな~」

楓さんと渚さんはそのままリビングを去っていく。
時計を見ると、日没までにはまだ数時間ある。

夕飯時には終わらせようと決意して、物置から掃除用具を取り出した。

「よしっ!」

気合いを入れると、ゴミの中へと足を突っ込む。
中を見れば、ただのゴミから脱ぎ捨てた服、書類、おもちゃなど様々なものがある。

「って、お金!」

なぜかお菓子のゴミの中からお札と小銭が出てきた。
どういう流れでこうなったのかわからないけど、あとでまとめて返そうと、ゴミの中から出て来た紙袋に入れる。

(あ、ビー玉だ。誰のだろう? こっちのピアスは……男性ものかな? わあ、傘まで出て来た……こんなにいろんなものが埋まってるなんて)

思わず頬を緩めていると、凌さんが顔を覗き込んできた。

「なんで楽しそうなの、一花ちゃん」

「だって、なんだか宝探しみたいじゃない? 色んなものが出てくるから面白くて。あと、持ち主は誰だろうって考えるのも楽しいの」

「いいね、本当に出会ったことがないタイプだ」

「?」

凌さんは優しく微笑んで、私の頭をぽんぽんと撫でる。

「手伝いたいところなんだけど、この後会長に呼ばれてるんだよね。とりあえず、これ連絡先。何でも、何かあれば連絡して」

「ありがとう」

「はーい、それじゃあね」

小さく手をあげて、ごみをかき分けながら凌さんが出て行く。
その背中を見送って、私は改めてゴミへと向き直った。