「あとは当たり前だけど、みんな星並学園に通ってて、樹生さんと渚さんは一花ちゃんと同じ高1、楓さんは高3で、音紘さんが高2、希遥さんが中3、七海さんが中1だったかな。ちなみにお手伝いさんも雇ってたんだけど、だいたいみんな3日ももたないんだよね」

「どうして?」

「端的に言えば、嫌がらせ?」

「ええ?」

3日も持たない嫌がらせって、一体どんな嫌がらせだ。
ニッコリ笑顔の凌さんは深くは語らず、切り替えるように言った。

「というわけで、身の回りのことは自分でやってね」

「それなら大丈夫。今までもやってたから」

「はなまるだね。じゃ、寮内を案内するよ」

また指で輪っかを作った凌さんが、部屋のドアを開ける。
階段を下りると、今度は玄関の目の前にある部屋へと入った。

「ゴミ置き場……?」

「いや、リビングだよ」

「でもゴミが山積み……」

「でも、リビングだよ」

なんとなくお手伝いさんが出ていった理由がわかった気がする。
リビング前で戦々恐々としていると、後ろから凛とした声がした。

「片付けても無駄だからよ」

さらりと綺麗な長い髪をなびかせて、女の人がリビングを一瞥する。
そして私を振り返ると、手を差し出してくれた。

「星並楓。よろしく」

「水瀬一花です。よろしくお願いします!」

すごい美人さんだ。
握手した手も白くて細い指で、美人は指先まで美しいのだと実感する。
楓さんは私の挨拶に大きな瞳を少しだけ驚きの色に染めた。

「本当に星並と無関係なんだ。きっとすぐに出て行きたくなると思うけど、頑張って」

それは凌さんが言っていた、お手伝いさんのように――ということだろうか。
どんな嫌がらせだったのか気になって、楓さんに問いかける。