彼はどう思ったんだろう。こんな私に呆れたかな? なんとも身勝手な感情で私の目には涙の膜ができていた。

 すると、頭に温かい重みを感じる。いつの間にか立ち上がってそばに来ていた彼が、私の頭に手を置いたのだと理解した。

「いつ分かったんだ?」

「一昨日」

 優しい彼の声に鼻を軽くすすって端的に答える。

 きっちり訪れる生理が遅れていて、身に覚えがないわけでもないのでソワソワしながら検査薬を購入して試した。

「そっか。夢花は隠し事とか嘘つくのが苦手だから、余計に一人で抱え込むの辛かっただろ」

 その言葉に必死で堪えていた涙が溢れそうになる。大樹は腰を落とすと、俯いている私を下から覗き込むような形で目線を合わせた。

 膝の上で強く握っている拳の上に彼の大きな手が重ねられる。

「生むのはさ、代わってやれないけど……でも嬉しいよ。本当に」

 穏やかに微笑んで告げられ、乱れっぱなしだった私の心は徐々に落ち着きを取り戻していく。表情を崩さないまま彼は、それに、と続けた。

「あれこれ不安になるのは、裏を返せば夢花がそれくらい子どものことや先のことを真剣に考えてるって証拠だよ。大丈夫、うちの母親なんてかなり適当だけど、俺はこの通りちゃんと育ってるわけだし」

 思わず吹き出しそうになった。たしかに大樹のお母さんは、かなり大胆で大雑把なところが多々ある。

 でも裏表がなく、はきはき物を言うので私との関係も良好だ。