だから、そんな彼が去年のクリスマスにこのホテルを予約していると知ったときは驚いて、しばらく信じられなかった。

 彼から、そういったサプライズをしてもらったのは初めてで、誕生日だってクリスマスだって、必ず私に欲しいものを事前に確認していた。

 一体、何事かと(いぶか)しがりつつも素直に喜んだ。

 部屋は最上階に近く、備えつけのインテリアひとつひとつに心を躍らせた。

 眺めも素敵で夜になるのを楽しみにしながら、ドレスアップしてホテルのレストランで食事を楽しんだ。

 さらにその後、ピアノジャズが流れるお洒落なバーにも足を運んで、あまりお酒が得意ではない私に、彼はスマートにシャーリー・テンプルを注文した。

 見慣れている彼の横顔も、いつもよりずっと格好よく見えた。

 緊張しっぱなしの私と違って、慣れた感じで注文する彼はバーのマスターと談笑してオススメを聞いたりしている。

 実は彼には、いきつけのバーがあってこういうところは慣れているんだとか。

 どうやら私があまりお酒を飲めないのを気にして、今までデートのときは自分も飲むのを控えていたらしい。

 私はそれが申し訳ないような悔しいような気持ちになって、今度そのいきつけのバーに連れて行ってもらうことを約束した。

 結局そこでも、私はシャーリー・テンプルを飲んだのだけれど。