それだけで、十分じゃないか。


壁に背中をつけて、ずるずると座り込む。


ここが、自分にはお似合いだ。


魔女にとらわれていた頃の方が幸せだなんて、皮肉だけど。


そう思い、クスッと笑った。


次の瞬間。


街人たちの怒号がすぐ近くで聞こえてきたかと思うと、地下室への扉へ体当たりする音が響き始めた。


当然1度では空かず、何度も何度もその音は繰り返される。


一体何人いるんだろうか?


「せーのっ!」


と、勢いをつける声は何十人という重奏になっている。


(きっと、この部屋に街人から集めた財宝が置かれていると思ってるんだわ)


ローズはできるだけ奥へ隠れるように移動し、身を潜めた。


重たい扉は何度も襲い掛かってくる人々に悲鳴をあげ、ネジが緩んで飛んで行った。


微かにもれる光。