声をあげれば、誰か気づいてくれるだろうか?


でも、気づいた人間が兵士であれ、街の人であれ、自分と助けるという可能性は低かった。


自分は、誰からも必要とされずに生きてきたから。


生まれたときから、煙たがられてきたから。


十何年ぶりかに会えた父娘の再会も、感動とはかけ離れたものだった。


だから……。


考えれば考えるほど、もうこのまま出られなくてもいいかもしれないと、思えてくる。


ここを出たところで、生きていく場所なんてどこにもない。


母親を探してみようにも、手がかりがない。


もしかしたら、娼婦の母親は別の男の子供を育てているかもしれない。


「もう……いいわ」


知らぬうちに涙が頬をつたい、落ちていた。


魔女の塔を出たときからこの現実が待っていたことは、理解していたはずだ。


ただ、ほんの一瞬でもアリムという男と出会い、恋を経験できたこと。