アリムが薬を持って家を出てから、一週間が過ぎようとしていた。


妹のサリエは薬を飲んだ翌日から調子が戻り、アリムと一緒に薬配りを手伝っていた。


それはやがて街のみんなの知るところとなり、薬屋の亭主をはじめとする信頼できる人々が、薬配りを手伝っていた。


「サリエそっちにはあと幾つ薬が残ってる?」


出かける身支度をしながら、アリムが言った。


「こっちはあと3つよ。みんなもう配り終えたって」


「そうか……」


戻ってきた当初は閑散としていた街だが、今では活気が戻ってきていた。


店先で花に水をやる大柄な奥さん。


窓をあけ、そこから布団を干している娘。


馬を走らせ、仕事へ向かう青年。


そんな当たり前の日常が、アリムのおかげで戻ってきたのだ。


「もう、病気の人はいないんじゃないかしら?」


サリエはそう呟き、薬のビンを揺らした。


「そうかもな。でも、念のため大切に持っておけよ?」


「わかってる」


答えて、すぐに鍵付きの戸棚に薬のビンをしまうサリエ。