その口調は優しく、塔の窓を割った本人とは思えなかった。


「お……兄ちゃん?」


その時、サリエがうっすらと目を開けた。


「あぁ。薬を買ってきたぞ」


「姫様を……助けてきたの?」


「そうだ。すごいだろ? 言った通りに褒美をもらって、その金で薬を買ってきた。街のみんなの分もある」


「……すごい」


微かにほほ笑むその頬に、赤みが戻った気がした。


「ほら、飲め」


サリエは小さく口を開き、その薬を飲みこんだ。


それを見ると、ようやくホッとして涙が出そうになった。


でも、まだやることが残っている。


アリムは妹を再び布団へ寝かせ、段ボールを抱えて家を出た。


これを街のみんなに配らなければならない。


悪人に見つかって大量に奪われる可能性もあるから、一軒一軒家を周り、この目で病人の存在を確認して渡していくつもりだった。


何日かかるかもわからない作業。