そう言うと、大きな男は体をよけてアリムを店へと招き入れた。


店の中に入ると、薬草の香りが鼻孔をツンッと刺激する。


赤レンガがむき出しの壁に、無造作に置かれた薬品のビンが並んでいる。


「お前のために感染病にきく薬を大量に入手しておいたぞ。おかげでこの店は赤字だ」


「悪いな。売らずに取っておいてくれたんだな」


「そうだ。倍の値段で売りさばく連中がいるからな」


男は一旦店の奥に引っ込み、すぐに大きな段ボール箱を抱えて戻ってきた。


それを開けて中をのぞくと、大量のビンに赤色の薬が10粒ずつ入っていた。


「これだけあれば、街のみんなを助けられる」


そう言い、思わず頬を緩めるアリム。


「これで足りるか?」


先ほど国王にもらった袋を開けてみせると、大男は目を丸くして、「これの半分で十分だ」と、何度もうなづいた。


「そうか。じゃぁ、これは全部取っておいてくれ。感謝の気持ちだ」


アリムは断る男の手に強引に袋を握らせ、代わりに段ボールを抱えて店をでた。


「お前、これだけあればそのボロ布を着なくてもいいんだぞ!?」


ホワイトの背中に段ボールを乗せるアリムに、男は声をかける。


「別に、俺は贅沢がしたいワケじゃない。このボロ切れだって……着てればなかなかいいもんだ」