わかっているのに……。


涙が、次から次へと溢れ出した。


もしかしたら、誰かが自分の帰りを待ってくれているかもしれない。


もしかしたら、誰かが抱きしめてくれるかもしれない。


もしかしたら、あたたかい言葉で迎えてくれるかもしれない。


そんな期待が、すべて打ち砕かれたから。


きっと、アリムはもうここへは来ないだろう。


元々褒美を目的で自分を助けたんだから、それが終われば、もう自分は用なしだ。


魔女のザイアンには強気な事を言ったけれど、この状況下でその気持ちもしぼんでいく。


もう、ダメなんじゃないか。


国王は感染を恐れ、自分をここから出す気もないだろう。


このまま、誰にも会わずにここで死んでいくしかないんじゃないか。


そう思った時だった。


「ローズ」


背中の扉の外から国王の声が聞こえてきて、ローズはハッと顔をあげた。


「今、あのボロ雑巾のような男は帰って行ったぞ」


「……そう」