☆☆☆

数週間ぶりの国は閑散としていた。


感染病が拡大したためか、人々はほとんど家の中に閉じこもり、時折野良犬の鳴き声がするものの、それ以外の物音はしない。


赤レンガの家の窓はどれも閉じられ、店も『クローズ』の看板がかけられている。


「ひどい有様だな」


ホワイトの背中から降りて、アリムが呟く。


たった数週間で、ここまでになっているとは考えもしなかった。


早くしないと、この国までダメになってしまうかもしれない。


「行こう」


再びホワイトの背中にまたがり、宮殿を目指した。


それからほんの数分後。


ローズとアリムは国王の玉座の前まで通されていた。


金の女性像が両端に鎮座し、赤い椅子に座っている国王。


久しぶりに見る父親の姿にローズはとまどいの色を見せた。


白い髭に、細かく刻まれた顔のシワ。


ローズが幼いころに見ていた父親とは、かけ離れていたから。


「ローズ、久しぶりだな」


そういう国王の口調は淡々としていて、義務的だった。


まるで自分の娘だなんて思っていない。