王室の人間はお金もあるから、褒美に目がくらむ王子もいない。


ただ、魔女が時々言う『今日王子が助けに着たけれど、兵士にやられて帰っていった』という嘘を信じたくて、夢を見ていただけ。


そして、夢を見ることさえあきらめかけていたとき……。


傲慢な男が窓の外からこちらをのぞいていた。


窓は開けれないと断ると、その窓を割ってまでズカズカと入り込んできた。


きっと、あの時にローズの心の扉も一緒に割れてしまったんだ。


硬く閉じられていた扉は丁寧にカギを使ってあけられることはなく、強引に、しかも土足で踏み込んできた。


ローズはそっとアリムの背中に触れた。


大きくて、暖かくて、心地よい。


「本当に、信じてるから……」


その言葉は風に流され、アリムの耳には届かなかったのだった。