どこまでも用意周到なザイアックに、とうとうローズは無言になった。


あたりは真っ暗で肌寒く、馬の首にペンダントのようにぶら下がっている光だけが頼りだった。


それからまたしばらくして、ローズはふとある事に気がついた。


数分前からザイアックの頭が前後左右に揺れて、まるで眠っているようなのだ。


「ザイアック?」


声をかけても、返事はない。


「馬の上で寝るなんて、危ないわよ?」


そう言って、肩に手をかけた瞬間――。


ローズは一瞬にして血の気が引いていくのがわかった。


触れたことのある感覚。


ゴツゴツと骨のでっぱった肩。


ゴクリと喉を鳴らし、唾を飲み込むローズ。


(まさか、そんなことないわよね?)


不安を抱きながら、ローズはザイアックの冠に手をかけた。


そして、それを勢いよく外した時……細かな光の粒がザイアックを包み込み、次の瞬間、その王子の姿はなくなっていた。


変わりにそこにいたのは……「おばあさま!?」ローズが悲鳴に似た叫び声をあげる。