その数十分後。


ローズはムスッとした表情で白馬の背中にまたがり、自分の前に座っているザイアックの背中を睨みつけていた。


「動物に剣を振り上げるなんて」


「しかし、あの竜は無傷ですよ?」


その通り。


ザイアックは振り上げた剣でローズのドレスのすそを切ったのだ。


ホワイトはギュッと目をつむり、その目を開けたときには口にドレスの端切れをくわえた状態で、ローズの姿はもうどこにもなかった。


「もう真っ暗よ? どこまで行くつもり?」


「今日は、このまま国へ向かって移動します。野宿なんてすると野生動物に襲われますからね」


「あっそ……」


ザイアックのいう事はいちいち正しくて、ローズを余計にイライラさせた。


「馬は休ませなくて平気?」


トロトロと歩く馬を気遣うふりして、どこかにザイアックの欠点がないかと探る。


「今日は昼間十分に眠らせておいたので、大丈夫ですよ」


「お腹がすいてないかしら?」


「馬の薬草と水は、洞窟に入る前にオアシスで済ませてきました」