しかし、アリムはその一発で完全にノックアウトされ、ピクリとも動かなくなってしまった。


それを確認し、「わたくしの勝ちだ」と、ザイアック。


(冗談でしょ!?)


さっきあれほど殴られていたにもかかわらず、ザイアックにはほぼきいていなかったのだ。


血は出ているけれど、倒れるほどのものでもない。


クルっと振り向いたザイアックから身を隠すように、ローズはまたホワイトの背中の後ろにしゃがみ込んだ。


「姫、行きましょう」


隠れても無意味だということはわかっていた。


すぐに見つかり、腕を掴まれる。


「嫌よ!」


「どうして?」


首をかしげて聞いてくるザイアック。


「だって、あたしを助けてくれたのはアリムよ!」


「だから、この青年には金をやると言ったんです。まぁ、それは拒まれましたがね」


「お金の問題じゃないわ! 気持ちの問題よ!」


「では、姫はこの青年が好きだとでも? ハハッ! 王国の姫が、このボロ雑巾のような青年を?」


冗談はよしてください。


ザイアックはそう言い、ローズを強引に引きずっていく。


「行かない……!」


「キュウっ!」