「ほら、観念するなら今のうちだぞ?」


ザイアックは鼻血を吹いて、口の端を切った。


しかし、その目はしっかりとアリムを捕らえていて離さない。


「どうする? もうあきらめろよ」


しぶといザイアックに、アリムの力は緩んでいく。


このまま殴り続ければ死んでしまう。


早く逃げ出すなり、なんなりしてもらいたかった。


「ねぇ……ねぇ、アリム、大丈夫なの?」


ローズが、心配そうに聞いてくる。


「あぁ……たぶん」


目を開けたまま気絶してるってことはないよな?


そう思い、手を止めて様子を伺う。


ザイアックの目はしっかり見開かれているものの、焦点があっていないようにも見える。


「まじかよ」


こんなところで気絶せずにさっさと帰ってもらう予定だったのに。


予定外の展開に頭をかいた、その瞬間。


ザイアックの拳がアリムの顔面をとらえた。


急なことで避けることもできず、そのまま横へなぎ倒される。


「アリム!!」


思わず、ローズは叫んだ。


ホワイトも「キュウキュウ」と鳴き声をあげる。