「突然で驚かれたでしょう。ローズ姫」


男は片膝をつき、アリムの後ろのローズへ挨拶をする。


「あなた、誰?」


「自己紹介が遅れました。わたくしは北の国のザイアック王子です」


「聞いたことないわ」


「それは当然でしょう。あなたは塔に閉じ込められ、情報を遮断されていたのですから」


ハハッと作り笑いを浮かべるザイアック。


ローズはアリムへ向けて「聞いたことがある?」と訊ねた。


「さぁ? 知らねぇけど?」


と、答えるアリム。


そしてローズはザイアックへと疑念の目を向けた。


「姫、わたくしの話を信用してはくれないのですか?」


「信用するって言われても……」


(そもそも、どうしてあたしがここにいるってわかったの?)


明らかに怪しいこの男。


王子様に助けられるのが夢だったローズだが、さすがに簡単に騙されはしない。