唇が触れるかどうかの瞬間、洞窟の中に強い風が入ってきて2人は視線を入口へとめぐらせた。


「台風でも来てるのか?」


外は真っ暗で、何も見えない。


しかし、次の瞬間。


カツカツと岩肌を歩く足音が聞こえてきたのだ。


とっさに、ローズを自分の背中へ隠すアリム。


「誰だ!?」


火のついた小枝を一本右手に持ち、見えない相手へ声をかける。


この辺一体はまだ砂漠地帯だから、人と出会うことはめったにないはずだ。


「どうも、こんばんは」


そう言いながら姿を現したのは……。


金色の冠。


白い服。


腰にさした剣。


それはどこからどう見ても「王子!?」ローズとアリムは同時に叫んだ。


(まさか、本当に!?)


突然現れた王子に目を見開くローズ。


どこの国の王子かはわからないが、あたまの冠は本物の証だ。